百害あって一利なし

とまでは思わないけど、基本的にたばこは吸わない方がいいらしい。世の中の目も厳しくなり、周りの喫煙者の話では、もはや喫煙者というだけで白い目で見られることも多いと聞く。

『Barでタバコを吹かしながらウイスキーを嗜む』、子供の頃イメージしていたダンディーな男達はもうどこにも居ないのかもしれない。

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JPSというあまりメジャーではない銘柄のタバコを吸っていたので、友達には「なんでそんなよく分かんねぇタバコ吸ってんの?」とよく聞かれた。

めんどくさいから「これが一番おっぱいの味に近いんだよね」とか言ってクソ適当に返してたけど、本当は通ってたカフェのマスターがJPS咥えてコーヒー煎れてる姿がかっこ良かったから。ほんとそれだけ。

そういえば中二の頃に悪友と初めてタバコを吹かした時はマイセンのハイブリットだったけど、それを選んだのも「外箱が好みだっただから」ってなだけで大した理由はなかった。


中学の後半をプレイステーションロックマンエグゼに主な時間を費やしてしまったせいで、名前書いたら入れるような工業高校しか入学できるところが無くなってしまった話は前にした気がするけど

消去法で選んだこの高校に入学した俺はそこで恩師と呼ぶに相応しい先生に出会った。その先生が顧問を務めていたソフトボール部に入部してそこそこ真面目に活動してたけど、顧問の先生が1年で異動になってしまい、学校一めちゃくちゃなメンツが集まってたソフトボール部は、文字通り一瞬でめちゃくちゃになってしまった。

部としては続けていたけど、吸わなくなってたタバコもまた吹かすようになり、よく親の免許証を使って古ぼけた自販機で酒を買っては仲間とたむろして、碌な就職なんてできるわけもないのに朝まで将来を夢見て語った。

「今の彼女と結婚したら地元に帰ってきて子供は最低3人欲しい」とか言ってたアイツは、卒業間際に彼女と別れて去年の冬には東京で付き合ってもない女を孕ませ、今は相手の実家に住んでいる。

「県外に出てビッグになって帰ってくる。500円まで値上がりしたらタバコをやめる」って言ってたアイツは、半年で仕事を辞めて帰ってきた。しばらく前にタバコはやめたけど大麻を吸うようになり、毎日Twitter大麻規制反対論を発信している。

「30歳くらいまでは一人暮らしでバリバリ働いて金持ちになる」とか言ってた俺も、結局1年で地元に帰ってきたし、今では妻子持ちとして平凡に事務職をしている。


コンビニに陳列されたセッタとアメスピを見て吸ってた奴らの顔を思い出したけど、あの時語った夢にはやっぱり意味なんてなかったんだなと思った。


当時部が荒れてても真面目にやってる奴もいて、最後の県大会があんな結果になってから俺は初めて『もう少し真面目に生きていれば良かった』と思うようになった。ただ、後悔するのが遅すぎたせいで関係ない多くの人にまで迷惑をかけてしまった。こんなところで言うことではないけど、本当にごめん。

時間を浪費するだけじゃなく何かに一生懸命になったり、現実的に資格とか取っとけば良かった。

 

 

 

見るからにタバコが好きそうなタイプではない今の妻と出会ったとき、タバコを吸ってるか聞かれた。俺は「吸ってないよ」と嘘をついてその日からタバコを辞めた。

2日に1箱、7年くらい吸ってたけど周りから聞くほど辞めるのは辛くなかった。


親友にタバコを辞めることを宣言した日のことは今でも鮮明に覚えている。
あの時、自分の中で何かが変わった気がした。

何かは分からない。

ただ「もっとマシな人間になろう」と決意が固まった瞬間だったように思う。