それ俺に言う?

痴吐きたい時ってあるじゃないですか。誰かに気持ちを聞いてもらうと整理がつくし、単純にストレスの発散にもなる。ただ、言う相手は選ばなければならないし、いつもくだらない話を聞いてくれる友人達には最大限の感謝をしなければならない。

高校時代、俺が意味不明な理由で突然彼女から振られて落ち込んでた時『雑魚が (笑)』と笑いながらタバコの煙を吹きかけてきた今倉くん元気ですか?僕は元気です。一生忘れません。貴方はこの先どんな徳を積んでも地獄に落ちます。

 

忘れないといえば、世の中どうでもいい事で溢れていて、よっぽど印象的な出来事でない限り大概のことは忘れてしまう。でも実は脳味噌の奥底に記憶は眠っているだけで、何かの拍子に思い出すことがあるんだとか。

 

 

 

の前、東京の小学校に通ってた頃遊んでいた友達から十数年振りに電話がかかってきた。正直携帯の画面に浮き出てきた名前を見ても誰か思い出せなかった。けど、

「もしもし あっくん?(俺のあだ名) 昔よく遊んでもらってた〇〇だけどー、分かる?」

あだ名で呼ぶ際の変なイントネーションと、語尾を伸ばすのんびりとした話し方を聞いた瞬間、当時の記憶が鮮明に蘇ってきた。

 

彼と初めて出会ったのは小学校1年生の冬。クラスが別だったので入学以降面識はなかったけど、親同士が知り合いだった事がきっかけで放課後たまに遊ぶようになった。

彼は妙に大人びてたというか、どこか気だるげで達観した雰囲気を纏っていたのを覚えている。
俺達がABボタンを連打してレックウザを捕獲しようと躍起になっていた頃、ポケモンなんかには見向きもせず鉄拳4で10連コンボの練習をしているような子供だった。
そういえば、ボボボーボ・ボーボボの録画をDVDにコピーして彼の家で見たとき、癖のないハッキリとした口調で『この家にはいらないな。』って言われたのを今思い出した。どういう意味??
まあ、いいや。

 

心地よい懐かしさを感じながら返事をした。


『おお〜!めちゃくちゃ久しぶりじゃん! てか遊んで"もらってた"って何だよ、よそよそしいなw 元気してた?』

「ハハハ、ごめんごめんw 来月籍を入れる予定だった彼女を寝取られたけど、元気でやってるよw」

『へぇ〜!ちょっと待って。』

 


???

 


一体何が起きたんだ。十数年振りの相手から投げかけられた「What's up?」の返答がこれか?どう考えても重すぎるだろ。なんなんだこいつは。上手く反応できなくて『へぇ〜!』とか言ってしまった。

急に飛んできた右ストレートに意識を刈り取られそうになりながら、なんとか俺は声を絞り出した。

 

 

 

 

『だ、誰に?』

 

 

 

 

彼は言った

「兄貴w」

 

 

 

 

なにわろとんねん。
俺は爆発した。